スチームパンクとは?
スチームパンク(steampunk)とは、サイエンス・フィクションを題材としたサブジャンルの一つである。「スチームパンク」という用語は1980年代後半に「サイバーパンク」をもじって派生した。
蒸気機関が広く使われている設定で、工場制機械工業の発達、いわゆる産業革命の起こった19世紀から第一次世界大戦の勃発する20世紀初頭までの風俗・文化がベースになっている。日本では明治末期から大正、昭和初期にかけての時代。更に、そのような中にSFやファンタジーの要素を組み込んでいる。ヴィクトリア朝の人々が思い描いていたであろうレトロフューチャーな時代錯誤的テクノロジーまたは未来的技術革新を登場させ、同時にヴィクトリア朝のファッション、文化、建築スタイル、芸術を描く。古典的デザインに機械パーツを組み合わせたスチームパンク的ファッションスタイルは、「ネオ・ヴィクトリアン」と称される。
起源と語源
スチームパンクという言葉は、1980年代後半にSF作家K・W・ジーターが、ティム・パワーズ(『アヌビスの門』1983)、ジェイムズ・P・ブレイロック(『ホムンクルス』1986)、そして自身(『Morlock Night』1979 と『悪魔の機械』1987)のヴィクトリア朝時代を背景としたファンタジー作品群を集合的にジャンル分けしやすい用語を探していて「スチームパンク」を思いついたと言われている。そのヴィクトリア朝時代に主流だったテクノロジーである"蒸気機関"を引き合いに出し、「サイバーパンク」を文字って名付けられた。
そもそもサイバーパンクとは、1980年代ブルース・ベスキの短編小説のタイトルで、内容は未成年のハッカー集団が銀行を襲うというもの。その後、1985年にSF誌の編集者であり評論家であったガードナー・ドゾワによって、ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』などのSF小説をジャンル化する言葉として用いられた。「サイバー」は、サイバネティクス (cybernetics) を語源とし、本来はフィードバックの概念を核にして生理学と機械工学、システム工学、情報工学を統一的に扱う学問領域であるが、これが転じてテクノロジーの過剰な発達を描いた世界観を意味する。「パンク」は、青二才、チンピラ、役立たずを意味する俗語である。この小説ではハッカー少年のことを指す。
そこからも分かるようにスチームパンクの「パンク」とは、いわゆるパンクファッションのパンクとは関連性がない。また「スチーム」についても同様に、19世紀後半から20世紀後半にかけての時代を特徴づけたもので「蒸気」や「蒸気機関」に限られたものではなく、その時代の風俗に初期の電気を使った技術やガス、未知のテクノロジー、ファンタジーベースであれば魔法なども動力として使用される世界観である。
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ファッションとしてのスチームパンク
ヴィクトリア時代にはドレスやスーツばかりではなく職種・階級に応じて服装が異なるため、ズボンやオーバーオールなどのスタイルも存在する。また日本では馴染みが少ないが水兵のセーラー服やナポレオンジャケットに代表されるミリタリーなエドワード朝のスタイルも含まれる。日本ではその時代はまだ着物が主流だったため和装や着物生地でドレスをあつらえた鹿鳴館スタイルや袴スタイルを基本とするのが和風スチームパンクとなる。
種類と特徴
スチームパンク
ヴィクトリア時代の服装を基本とした一番オーソドックスなスタイル。燕尾服、コルセット、フロックコート、テーラードジャケット、ステッキやトップハットなどを用いる。
スチームパンクカジュアル
日常着のスチームパンクファッションで、カジュアルファッションに一部スチームパンクっぽさを取り入れたスタイル。初心者はバッグやアクセサリー、小物などから取り入れると表現しやすい。
スチームパンクロリータ
略称はスチームロリ、スチロリ。ロリータファッションとスチームパンクの融合。中でもでクラシカル系との相性が良い。フリルを多用したスカート、パニエ、クリノリンなどを用いる。
※ ロリータファッションとは?
スチームパンクゴシック
ゴシック寄りの黒を基調としたドレッシーなスタイル。ゴシックファッションに代表される魔女や悪魔、吸血鬼を連想させる。
アビエイター
ライト兄弟がライトフライヤー号による世界初の有人動力飛行に成功したのが1903年。その時代を象徴する飛行士スタイル。飛行帽、ゴーグル、フロントフリルブラウス、マフラー、レザーグローブ、ベスト、ニッカボッカ、レースアップロングブーツ。イベントやコスプレでは飛行機械であるジェットパックを背負う場合もある。
スチームパンクパイレーツ・スカイパイレーツ
海賊を彷彿とさせるファッションスタイル。ドクロマーク、海賊帽、提督帽、三角帽、二角帽、クラシックシャツ、ハーレムパンツ、サッシュベルトなどを用いる。三角帽(Tricorne、トリコーン/トライコーン)突起が三つある帽子。トライコーンのほうが米語英語の発音に正確だが、一般的にはトリコーンと表記する。突起が左右の二つだけのものを、二角帽(Bicorne、バイコーン)という。
スチームパンクウエスタン
アメリカの西部開拓時代をモチーフにしたスタイル。西部劇とSFの融合。1999年公開の『ワイルド・ワイルド・ウェスト』がその世界観。カウボーイハット(テンガロンハット・ウエスタンハット・カルトマンなど)、ウエスタンブーツ、ベルトとバックルなどを用いる。
クロックパンク(Clockpunk)
スチームパンクとよく似た設定の世界観だが、テクノロジーが異なる。スチームパンクが名前の通り蒸気機関を動力とする産業革命時代を舞台とするのに対して、クロックパンクは、それよりももっと前のルネッサンス風の機械テクノロジーが進化した世界が舞台。「ネジ巻き」や「オートマタ(からくり)」をモチーフに取り入れたスタイルが特徴で、大きなゼンマイネジを背中に付けたスタイルがそれっぽく見える。
ディーゼルパンク(Dieselpunk)
1920年代~50年代の世界大戦期、ディーゼルエンジンを動力源とする世界にSFを組み合わせたもの。ファッションとしては、軍服をイメージするミリタリー系が基本となる。
スチームパンクを題材とした作品
スチームパンクは、メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』(1818年)、ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』(1869年)、H・G・ウェルズ『陸の甲鉄艦』(1903年)といった19世紀の科学ロマンスに影響を受け、そのスタイルを踏襲していることが多い。
このジャンルの発展を語る上で重要な作品がいくつか、ジャンル名が生まれる前に存在している。マーヴィン・ピークの『タイタス・アローン』(1959) は、スチームパンクの要素の多くを先取りしていた。アメリカのCBSのテレビドラマ『The Wild Wild West』(1965–69) があり、後に設定を借りた映画『ワイルド・ワイルド・ウエスト』(1999) も製作された。
ウィリアム・ギブスンとブルース・スターリングの小説『ディファレンス・エンジン』(1990年) は、スチームパンクを広く知らしめた作品としてよく引き合いに出される。
宮崎駿のアニメ映画、『天空の城ラピュタ』(1986)、『ハウルの動く城』(2004) や大友克洋の『スチームボーイ』(2004) などもスチームパンク映画とされることがある。どの作品もスチームパンクを構成する時代錯誤的ガジェットが登場する。
ファンタジー的スチームパンクは特にコンピュータゲームによく見られる。
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『ふしぎの海のナディア』
1990-1991年にNHKで放送されたアニメ。ジュール・ヴェルヌによるSF小説『海底二万里』及び『神秘の島』を原案とし、総監督は庵野秀明、キャラクターデザインを貞本義行が務めた。
本作品のベースとなったのは、1980年代初頭に宮崎駿がNHKでのTVシリーズ作品として準備した『未来少年コナン2』という位置付けの『海底世界一周』という企画である。だがこの企画は当初実現せず、宮崎は後にスタジオジブリのアニメ映画『天空の城ラピュタ』として作品化した。
一方、元の企画そのものはNHKと東宝に残され、1980年代後半に、NHKのプロデューサーが、この『海底世界一周』を元にした企画案をアニメ制作会社に持ち込む。この企画案をベースに様々なアイディアを追加していき、本作品が生まれることとなった。謎の青い石や超古代文明の設定、第1話のナディアが追われるシーンなど本作が『天空の城ラピュタ』に類似したストーリー展開を持つのはこの為である。
後年、庵野が発表する作品『新世紀エヴァンゲリオン』は、当時の庵野の頭の中では、『ふしぎの海のナディア』に準じた世界観上にある続編的物語であった。この案は、本作の権利を所有するNHKからの版権許可が得られなかったために実現しなかった。しかし、エヴァの世界の歴史書には、19世紀末にネオアトランティス事件があったと記載されていたり、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』では本作の劇中音楽の一部が使用されていたりと、 庵野監督的にはどうにか繋げたいという思いがあったようだ 。
そして、ナディアのCD「Good Luck Nadia」ドラマパートにて、西暦2005年の第2新東京でナディアのひ孫である伊藤ナディアとその友人リツコが語り合う場面で「ナディア」の物語は幕を閉じる。